YAPC::Japan 運営ブログ

YAPC::Japan各開催地の情報などをまとめていきます。

PHPerKaigi・iOSDC Japan運営側の視点で語る、技術カンファレンスを表からも裏からも楽しむ方法!

主にPHPのカンファレンスの運営に携わっている長谷川智希(@tomzoh)さんとことみん(@kotomin_m)さんに、運営側の観点から伺おうと思っていたら、なんとお二人の技術コミュニティでのルーツにはYAPCの存在が! YAPCに参加した思い出や技術カンファレンスの楽しみ方、運営スタッフとしての活動まで、幅広く座談会形式でお話を聞きました。聞き手はkobaken(@kfly8)です。

イベントに行きたいのに行けなかった期間が長すぎて、今は爆発中

PHPerKaigi・iOSDC Japanのスタッフ集合写真

――今回は、技術コミュニティの運営面で広く活躍されていらっしゃるお二人をお迎えしました。まずは普段、お二人がどんなことをされているか教えていただけますか?

ことみんさん(以下、ことみん)  株式会社ウィルゲートで、新卒3年目のエンジニアとして働いています。開発のメインはPHPです。Webアプリケーション全般の開発を担当しつつ、開発組織の文化づくりやイベント運営を全体で見る組織開発チームも1年くらい兼任していました。今はSREチームに異動して、PHPのバージョンアップに取り組んでいます。

長谷川智希さん(以下、長谷川) 僕はデジタルサーカス株式会社で取締役CTOとして働いています。PHPでできたOSSのパッケージを使って大規模なサイト開発をする会社です。普段は、コードを書くというよりは採用業務が主ですね。趣味でiOSDC JapanPHPerKaigiを主宰しておりまして、「趣味:カンファレンス参加、特技:カンファレンス運営」です。

――お二人が運営にどのように関わっているか、詳しく教えていただいてもいいですか?

ことみん PHPのコミュニティでよく勉強会に行ったり、エンジニア全般コミュニティの勉強会やカンファレンスで参加したいものがあれば、いろいろ参加したりしています。初めて運営スタッフとして関わったのはPHPerKaigi 2023のコアスタッフからです。

長谷川 ことみんさんには「めちゃくちゃ参加している」というイメージを持っていたのですが、運営という意味では少ないんですね。

ことみん 運営に関わっているのはPHPerKaigiと、PHPカンファレンス北海道の2つです。勉強会に行き始めたのは2023年からで、2022年はPHPerKaigiとPHP Conference Japan 2023の2つにしか行ってないはず……。

――イベントにはどのくらいの頻度で参加されているんですか?

ことみん ならせばだいたい月に1回はカンファレンスに行って、それとは別に月3~4回くらいは勉強会に出席しています。特に2023年に入ってからは参加が増えてきました。

――月3~4回ってすごいですね。今年になって増えたきっかけは何だったんですか?

ことみん 私は北海道出身で、もともとは北海道にいる頃にカンファレンスに参加して「エンジニアになりたい!」と考え、エンジニアになったんです。上京することになって「よし、東京にはカンファレンスがいっぱいあるな!」と思ったら、何にもない……みたいな感じで、ずっとうずうずしていたんです。

長谷川 コロナ禍が来てしまいましたからね。

ことみん はい。たぶん上京して初めてオフラインで参加したカンファレンスがPHPerKaigi 2022のハイブリッド開催かな? 2023年にかけてだんだんオフラインのカンファレンスが増えて、「よっしゃ増えた!」と思っていっぱい活動してたら、こうなっちゃいました。

ことみん もしコロナ禍がなくて、継続的にカンファレンスやイベントがある状況だったら、逆に1年に2~3回くらいしか行っていなかったかもしれないですね。行きたいのに行けない期間が長すぎて、今そのリミッターが外れて爆発しちゃってる感じだから、ちょっと最近は反省して取捨選択をしようと思ってます。

――長谷川さんはいかがですか?

長谷川 僕が主宰している2つのカンファレンスは、基本的にはどちらもボランティアで運営されています。費用面ではスポンサー各社に協力していただいています。そういう意味ではYAPCと同じスタイルのイベントです。それ以外は参加するだけですね。

――カンファレンスを2つ主宰しているってさらっと言ってますが、結構異常なことですよね……!

長谷川 そうですね、異常だと思います(笑)。1つのイベントは単発では6ヶ月くらいかかるので、2つは1年でまあなんとかなる。なんとかなるけど気は休まらないので、あまりおすすめはしないですね。

カンファレンスは「行こうかなと思った時が行きどき」

――勉強会やイベントの参加・運営を複数やるって、相当なエネルギーを使うと思います。初めて参加したイベントやコミュニティに関するきっかけをお伺いしたいです。ルーツが気になります。

ことみん 初めて参加したのはオープンソースカンファレンス2018 Hokkaidoです。当時高専の3年生で、友達と「みんなで行くか!」と札幌まで出かけていきました。そこで初めて、カンファレンスにはいろいろなセッション・ブースがあることや、最後にLTがあって、5分経ったら銅鑼を鳴らすということがわかって、すごく面白くて。

その時に、北海道の情報系コミュニティ「LOCAL」(ローカル)の「学生部」の学生の方々と話していたらめちゃめちゃ盛り上がって、そのままコミュニティに入ることにした、というのがきっかけです。

ホーム | LOCAL
学生部 | LOCAL

――とんとんと進みましたね。初めてカンファレンスに参加する際には、聞いている話がよくわからない、難しいといった印象を持たれることもあるかと思います。そういう印象はありませんでしたか?

ことみん セッションで話されている技術のことは全然覚えていないのですが、しゃべっている人が面白そうだったり、カンファレンスや懇親会の雰囲気や、たくさん話せたりすることが楽しくって。

長谷川 カンファレンスで「一番面白い」のは、話を理解することではなかったりするんですよね。良いと思うのは「うわ、何言ってるかわからないけどめっちゃ面白い」。スピーカーがめちゃくちゃ楽しそうで、それを見るのがとても楽しい、と感じると、一番ハマりやすいですね。

ことみん 本当にそんな感じでした。「すごく難しそうな技術の話を楽しそうに早口でしゃべっている! 全然わからん!」というのが楽しかったです。

――その後、たくさんカンファレンスに参加するようになっていっていますよね。

ことみん 北海道に住んでいる頃は、LOCAL学生部や道内のコミュニティの勉強会に加えて、オープンソースカンファレンス2018 Hokkaido、オープンソースカンファレンス2019 Hokkaido、YAPC::Tokyo 2019、builderscon tokyo 2019……結構行ってましたね。LOCALの中で教わって、遠方のカンファレンスにも行ってみようと思いました。

――なぜ遠方にも行こうと思ったんですか?

ことみん YAPCやbuildersconには学生の交通費・宿泊費を支援する制度があったんです。北海道から道外へ行くのは飛行機一択で、どうしても高額になります。せっかく支援があるなら行ってみようと。

――長谷川さんにもそういうルーツはありますか?

長谷川 僕の場合はことみんさんほどとんとん拍子に進んだわけではありませんでした。しかもデビューが遅かったんです。社会人になってから12~13年くらいは何にも参加していませんでした。僕は「勉強会にはあまり興味ない」とずっと思って生きてきたんですよ。「エンジニアだしコードを書いてりゃいいじゃん」なんて考えていたけど、コミュニティに対しては「なんとなく行ってみたいな」とは思っていたんですよね。そして突然、CakePHPのクリスマス勉強会に参加してみて、「これはなるほど、面白いな」と。

――突然参加に至った経緯は何だったのでしょう?

長谷川 ある時僕がCakePHPの本を書きまして、「これならもう勉強会に行ってもいいかな」と思ったんですよね(笑)。本を書いて自信がついたというか。その時期に勉強会がたまたまあったので行ってみたら、右にはCakePHPの別の本を書いた著者がおり、左にはコミッタがいて、という環境で、衝撃を受けました。

――「本を書いたから行ける」と思えるようになるのは、相当ハードルが高かったんですね。

長谷川 カンファレンスって、たぶん「行こうかなと思った時が行きどき」じゃないですか。僕はなんとなく「どうなったら行ってもいいか?」と考えて、なんとなく機会を逃してしまっていました。僕からのメッセージとしては「そんなこと言っているといつまでも行けないから、みんな早く行った方がいいよ」です。

――感想はいかがでしたか?

長谷川 僕は当時、社内では技術面でリードしないといけない立場でした。勉強会に集まったのは他社で同じくリードしているタイプの人たちだったので、リミッターを外して技術の話をしても大丈夫だというところがめちゃくちゃ面白かったんです。それで次は、毎月やっている勉強会に参加し始めました。

――そのお話を踏まえると、長谷川さんの場合は、ことみんさんの「何言ってるかわからないけど楽しい」という体験はあまりされていないですか?

長谷川 いえ、もう少し後に数学が好きなコンピュータエンジニア向けの「数学勉強会」というのがあったんですが、そこに参加した時に同じことを感じました。「何言ってるか1つもわからないけど面白い!」と感じましたね。

YAPCは、人生の方向性を変えたイベント

長谷川 僕が人生ひっくり返ったなと思った1つ目がCakePHPの勉強会だったんですが、もう1つ、僕はYAPCに「人生を狂わされた」と思っているんです。

――YAPCにそんなに影響されることってありますか?

長谷川 僕は今、2つのカンファレンスを主宰する“カンファレンスジャンキー”になっているんですが、そのきっかけはYAPC::Asia Tokyo 2015に参加した結果、「世の中にこんな楽しいものがあるとは! そして自分の領域にもこれが欲しい!」って思ったことなんです。しかもPHPに関しては、当時PHPカンファレンスが既にあったのに、別のカンファレンスを立ち上げたんですよね。

僕のやっていることのかなりの部分は、YAPC::Asia Tokyo 2015の受け売りで、例えば「イベントが終わったらブログを書いてください」と言っているのもそうです。YAPCに大変良い方向へ人生を狂わされ、YAPCが人生の方向性を変えたイベントだと思っているんです。

――「自分の領域に必要だ」と思ったのはどういうところでしょう?

長谷川 2016年に初開催したiOSDC Japanについて言うと、当時僕はiOS開発をやっていたんですが、iOS技術者のためのカンファレンスがなかったので、僕たちにもこういう大規模なイベントがあった方がいいし、やりたいと思いました。PHPerKaigiの場合では、それまでにも別のPHP系カンファレンスに参加したことはあったんですが、だいたい1日でシュッと終わるタイプだったんです。YAPC::Asiaはひとつの区切りの年で、ものすごく大きな規模でやっていたじゃないですか。3日間かけてじっくりやるのは楽しいな、これは必要だなと。

あの年、YAPC、RubyKaigi、PHPカンファレンス、PyConなどの代表者が集まる「言語カンファレンス大反省会 2015というイベントがあったんですよね。その場で、YAPC::Asia Tokyoの運営をしていた牧大輔(@lestrrat)さんに「カンファレンスって、どうやればできるんですか?」って聞いたら「会場取ればできるんじゃない?」と言われまして。そこから変わりましたねぇ。

――会場を取ったらカンファレンスはできるものなんですか?

長谷川 本当に会場を取ればできました。みんなもやったらいいと思います!

iOSDC Japan 2016を主催した #iosdc | 長谷川智希 @tomzoh blog

ことみん そうだったんだ……。

長谷川 miyagawa(@miyagawa)さんや牧さんがYAPCを運営していた頃って、ユーザー主体のカンファレンスという文化がまだなかったから、スポンサーを取るのはきっと大変だったと思うんです。僕らが始めた頃は、その当時の皆さんに比べたら楽をさせてもらっていると思います。

――スポンサーを集める歴史があって、今は技術コミュニティも発展してきて、土壌ができているということですね。

長谷川 そうだと思いますね。技術カンファレンスのスポンサーになることが企業にとって普通のことになってきている感覚があるじゃないですか。もちろん、企業にとってのモチベーションアップや採用にもつながっているとより良いんですが。

何が一番難しいかって、その時々でたぶん違うと思うんです。今は会場探しが一番難しい気がしますね。必要な人数、適当な部屋構成、払えるお金で空いている会場を探す……ってかなり難しい。突然始めようとするなら、スタッフを集めるのも難しいかもしれないですね。ことみんさんからはどう見えますか?

ことみん PHPerKaigiで初めてスタッフをやった時に、参加するだけではわからないことがあるってわかりましたね。準備することは多いだろうとは思っていたのですが。

長谷川 僕たちは好きでやっているから、準備の多さというのは「自分で増やしている」ともいえますね。

ことみん 確かに!

長谷川 アイデアを思いついたらやりたくなっちゃうんですよねぇ……。何かやりたいという人がいる時に「できることだけをできる」のが許されるのが、ボランティアベースの草の根テックカンファレンスの面白さだと思いますね。

僕らの場合でいえば、オンライン配信がすごく進歩しているんですが、カンファレンスの総体としてそちらが良いと思ってやっているわけじゃないんです。たまたま配信まわりがすごく好きな人がいて、「これやりたいです」と言って、それをやっていたらできるようになっていたというだけです。その人がもしいなくなったら、たぶん縮退していく。それを許さないと、草の根テックカンファレンスの運営は難しくなっていくでしょう。

――「やらないといけない」だと続かないですよね。

長谷川 やりたいと思うことだけ残した方がいいですよね。スポンサーの皆さまとの窓口は自分がやるから、スタッフの皆さんはやりたいことをのびのびとやってほしいなと、常々思っています。

ロゴ入りマカロンにペンライト「やりたいと思ったことをやる」

――「スタッフとしての参加」に興味を持った方に対してお誘いするとしたら、どうしますか?

長谷川 つい最近iOSDC Japanのスタッフ打ち上げをやったんですよ。その時に、初めてスタッフとして参加した社会人1年目の人から、これまでは参加者としても参加したことがなかったと聞いたので、「すごいね」って言ったら、「初めてのカンファレンスに行くと誰ともしゃべらずに帰っちゃうかもしれないけど、スタッフならとりあえず居場所はある」と答えていまして。

それはそれで、友達を作る良い方法かもしれないなと思いました。同じぐらいの年代で同じようなことを考えている、同じような立場にいる人と友達になれるチャンスだし、僕は次のスタッフ募集の言葉として書こうって思ったんです。ことみんさんだったらどう勧誘します?

ことみん 確かにスタッフとして参加すると友達ができる、というのはそうだと思います。

「何回かカンファレンスに参加したことがあって、ちょっとスタッフに興味がある」という方に向けては、「スタッフをやることで、カンファレンスの表側の楽しさだけではなく裏側の楽しさまで360度楽しめる」とお伝えしたいです。楽しいものを作る側に回るのもそれはそれで別の楽しさがあるからおすすめです。

――長谷川さんが好きなスタッフ業ってありますか?

長谷川 僕は主宰なので……何でしょうね。LTの司会かな? LTの司会は大変だけど楽しいですね。あとはクロージング。みんな盛り上がってわーっと終わるから、割と好きなんですよね。

――ことみんさんは、スタッフ業務でどんなところが楽しいと感じますか?

ことみん 開催当日に「この場を作っている」というようなスタッフ同士の一体感も、カンファレンスを作り上げる手応えを感じられるところもありますね。裏側のことまで知ると、その後に別のカンファレンスに参加したら「あ! こんなところまでスタッフの人がやってくれてる!」って、感謝の気持ちが100倍くらいになります。

――逆に大変だと感じたことがあれば教えてください。

ことみん 大変だと思うことは全然なかったです。長谷川さんが主宰するカンファレンスだからかもしれませんが、「やりたい」と思ったことをやれちゃうところが面白いですね。「自分がこういうのをやってみたいんですよね」と思ったら「いいねいいね」って反応をもらえて。

――どんなことをやったんでしょう?

ことみん 「PHPerKaigiのロゴ入りマカロンを作りたいです」と要望を出して、ロゴをお菓子に印刷して実際に作りました。

長谷川 あれはよかったね。

ことみん 「甘いものがあったらしょっぱいものもほしいですよね」って相談して、おせんべいも発注してもらいました。

PHPerKaigiのロゴ入りマカロンとおせんべい

ことみん あと、「Twitter(現X)のアイコンにPHPerKaigiの枠を付ける」というのを思いつきました。当日みんなが実況ツイートをするから、そこでアイコンを変えられればより参加している・盛り上がっている感じを出せるんじゃないかと。長谷川さんに「やれますか?」って聞いたら「やれるよ!」と返事が来たので、やっちゃいました。

長谷川 Twitterのアイコンに丸いフレームをかぶせられる画像ジェネレータを作って、アイコンを設定してもらうと、当日のハッシュタグ検索で見た時にみんなの発言にフレームとカンファレンスのロゴが入っていて統一感が出ました。とてもいい企画だったのでおすすめです。

blog.phperkaigi.jp

――他にも面白かった企画があれば教えてください!

長谷川 最近の当たり企画でいうと、皆さんに手元で色を変えられるペンライトをお渡しして、LTのスピーカーの方にあらかじめ推し色を聞いておいたんです。LTが始まる前に参加者に「推し色はピンクです」と伝えて色を変えてもらって。

登壇者の推し色に応じて変わるペンライト

長谷川 時間が少なくなったら「残り時間わずか、ペンライトを振れ」って表示して、みんなでペンライトを振って時間切れを知らせる……というものをやりました。あれはめちゃくちゃ楽しいですね!

長谷川 でもペンライトは1本あたりまあまあのお値段がするので、「そこに金をかけていいのか?」って冷静に考えると正気に戻りそうになるから、気にしないようにして注文しないといけないです(笑)。

――確かに。でも一体感が演出できるのはいいですね!

長谷川 アンケートを見ると、参加者の皆さんも楽しんでくださっていそうだという手応えがありました。僕たちは同じコンテキストで集まって一体感を感じたいんですよね。ちょっと性質は違いますが、音楽のライブなどのイベントも運営の勉強になります。

――運営側としては、セッションでの一体感のほかに、ブースを回遊してみてほしいという意図もありますね。

ことみん スポンサーブースを巡るスタンプラリーなどがあると、スタンプを集めるために話しかけやすいですよね。

長谷川 最近のスポンサーブースはめちゃくちゃ練り込まれていますよね。企画もたくさん用意されているし。

PHPerKaigi 2023のスポンサーブースの様子

企画には積極的に乗っかっていけば、もっと楽しめる!

――ことみんさんは「オフラインのカンファレンスではこういうふうに人に話しかけるといい」という内容の発表をされていましたね。

speakerdeck.com

ことみん カンファレンスであまり人と話さずにセッションを聞くだけで終わっちゃうのが、めちゃめちゃもったいないと思ったんですね。技術コミュニティに参加する良い機会だから、いろいろな人と話して楽しんでほしいと考えていました。

そうなると自分からも話しかける方がいいけれど、「何を話せばいいのか?」という状況になりがちなので、「これを読んでおくといい」と言えるような解説をしようと思いました。

長谷川 セッションだけ聞いて帰っちゃう話は、ことみんさんの実体験ですか? それとも他の人を見てそう思った?

ことみん 他の人の様子を見てですね。「カンファレンスってレベルの高い人ばかり集まってるんでしょ?」「自分にはまだハードルが高いな」みたいな話をよく聞いていたので。

――ことみんさんから見たおすすめの楽しみ方を教えてください。

ことみん スポンサーブースを全部回るのがおすすめです! 最近面白い企画が増えているというのもありますが、スポンサーさんがいてこそのカンファレンスだと思うので。ブースではいろいろな企画が用意されているのでそれに参加するだけでも話しやすいし、初めて知る会社だったら会社の話を教えてもらったりできますし。あと、私は運営の企画にも結構乗っかっていくタイプですね。

長谷川 やっぱり「運営がやっている企画には積極的に乗っかる」っていうのは、カンファレンスを楽しむための1つのコツですね。

舞浜に行ってゲートをくぐったら、ねずみの耳を装着した方が楽しいじゃないですか。そこで斜に構えると面白くなくなっちゃうんですよね。運営する側は、真っ正面にお城が見えるあのロードでいかに耳を付けてもらうかについて考えるといい、っていつも思うんです。

長谷川 「踊る阿呆に見る阿呆、同じ阿呆なら踊らにゃ損々」と昔の人はよく言ったものですね。同じことだと思うんですよ、きっと。

――全力で乗っかっていくスタイルはいいですね。

長谷川 はい。カンファレンスに行くきっかけも同じようなものだと思うんです。勉強会で「どんどん行った方がいいよ」という話をよくします。自分自身の話も含め、「もうちょっと強くなってから行こう」って思っていると一生そういう時は来ないし、ある程度強くなってから入っても、世の中にはやばい奴がたくさんいる。だから、行こうと思った時が行き時ですって。

突き詰めるとその2つですね。行こうと思ったら行き、行ったら乗っかる。そして僕たちは乗っかりやすいコンテンツを作っておく

――長谷川さんのおすすめするカンファレンスのコンテンツは何ですか?

長谷川 カンファレンス初心者におすすめするんだったら、やっぱりLTですね。「LTだけとりあえず見たらいい」という感じはします。懇親会ももちろんおすすめですけど、やっぱりさすがにいきなり参加するのは難しいと思いますから。

懇親会、「話す人を作っておく」でもうこわくない

――懇親会のハードルって高く感じられがちだと思うんですが、僕は懇親会がカンファレンスにおけるメインコンテンツだとも思っているんですよね。

長谷川 それはつわものだからだと思いますよ!

PHPerKaigi・iOSDC Japanの懇親会

長谷川 僕がもしいきなり一人の参加者としてYAPCの懇親会に行くとしたら、確実に、壁際に立って、忙しいふりをしながら、Twitterを見て、ビールを飲んでいる自信があるんですね。結構いろいろな人がそう言ってるから、たぶんみんな同じなんだと思いますが、ことみんさんは先ほどの話を聞いているとちょっと違いそうですね(笑)。

――ことみんさんは壁際に一人で立つ経験をしたことはありますか?

ことみん あまりないですね……。私は自分から話しかけに行ったり、たまたま同じテーブルになった人と話したり、積極的にやるタイプなので。それは「やった方が楽しい」からやっているんですが、初めて懇親会に参加する方にとってはやっぱりどうしてもしゃべるのが難しいというお話をよく聞きます。

ことみん 私がよくアドバイスしているのは、だいたい懇親会は最後のコンテンツなので、そこまでのカンファレンスの間に「しゃべったことがある人を作っておく」、そして「その人に懇親会で話しかける」というやり方です。話しかける人がいると参加するハードルって低くなりますよね。例えば、スポンサーブースに行ってブースの人と話しておけば、「さっきはスポンサーブースでありがとうございました」って挨拶できます。

――すごくテクニカルですね!

ことみん スピーカーの人にトークが終わった後で話しかけても、そんなに長い時間は話せないと思うんですよね。なので、懇親会でまたその人に話しかけに行くこともできます。

長谷川 気になったスピーカーの人とこみ入った話をするには、懇親会はすごくいい場ですよね。「さっきご挨拶したのに時間がなくて話せなかったんですが」みたいなことができるといいですね。懇親会の前にいろいろ見たり聞いたりしておくのは結構大事なんだろうなとは思いますね。

カンファレスは「話を聞いたり、話しかけたりする」良い機会

――カンファレンスへの参加を迷っていたり、参加して楽しみ切れていなかったりする人たちに向けて、お二人からメッセージをいただきたいと思います。

ことみん 普段から技術コミュニティに参加していて、「ここに集まってくる人たちはすごくあたたかい」と感じています。もちろん技術の話がしたい!学びたい!という目的もありますが、楽しみたくてやっている人が多いと感じます。初めてカンファレンスに参加する人ウェルカム!という雰囲気がとてもあるので、ここまでのお話にもあったように、企画に乗っかってみたりすると結構話しやすいと思います!

また、セッションやトークを聞いても「何が何だかわからない……」という不安もあると思うんですが、何か1つ新しい単語を覚えるくらいの気持ちだといいかもしれません。「聞いたことない単語だから聞いてみよう」でもいいですし。「何かを学んで帰らなきゃ」なんて思い過ぎないことも大事かなって思っています。

――それは本当にそうですね。

ことみん 学生の頃に参加したカンファレンスで、技術のことをきちんと学んだという記憶があんまりなくて、「こういう単語があるんだ」っていう発見だけでもとても楽しかったです。

長谷川 カンファレンスのことを「勉強しに行くところ」だと思わない方が、たぶんより楽しく感じられるだろうと思います。ことみんさんの話ともかぶるんですけど、その場で何かを理解しようと思うよりは、あくまでも軽く浅く触れる場所だと思うで来てもらうのがいいだろうなと考えています。

ことみん うんうん。

長谷川 そして、いったん来てみたら、できるだけ乗っかって遊ぶ! そうすると楽しめるだろうと思いますね。僕が主宰しているカンファレンスは有料なので「とりあえず来てください」とお伝えするのは難しいですが、過去の自分に向けてメッセージを伝えるとしたら、そんな感じです。

長谷川 技術について自分で調べるだけでは見つからないようなことも結構カンファレンスにはあるんですよね。そして、ちょっとここは言葉を選ぶところではありますが、「こいつは技術の変態だ!」と思えるような人がいっぱいいるじゃないですか? そういう人から直に話を聞いたり、話しかけに行ったりする機会って、なかなかないと思っているんです。そんな良い機会だととらえていただければいいんじゃないかなって思いますね。


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